いつか子供に伝えたいお金の話

インデックス投資(投資信託を使った国際分散投資)による資産運用・各種保険・クレジットカード・節約など「お金」に関することを書き綴るブログ

『インベスターZ』(三田紀房著)を読んでみました

東大受験を題材にして大ヒットした漫画『ドラゴン桜』の作者・三田紀房氏の最新作『インベスターZ』を読んでみました。



昨年、週刊モーニングで「投資」を題材にした漫画の連載が始まったという話は色々なところから聞こえてきましたが、これまでは読む機会がありませんでした。

ところが先日、職場の同僚が「これ面白いですよ!」と、『インベスターZ』の単行本(1~3巻)を貸してくれたので、これ幸いと読んでみることにしました。


職場内で「ちょっと投資に詳しいキャラ」に仕立てあげられてしまった私のところには、自然と投資に関する情報や相談が集まってくるようになっています。

年金の運用状況やアベノミクスについての質問を受けたり、「数年前に買って半値になったまま塩漬けとなっている投資信託をどうすればいいのか」はたまた「儲かる株はどれか?」、なんて相談を受けることが多いのですが、今回は投資漫画『インベスターZ』を手渡されて、その感想を求められました。



◎『インベスターZ』とは


『インベスターZ』は、中高一貫の超進学私立学校で各学年成績トップの生徒で密かに構成される「投資部」が、100年以上に渡って学園のすべての運営費を投資によって賄っているという設定の物語です。
その「投資部」に入部した中学1年生の主人公が、実際に投資を通じて色々と学んでいきます。

まだ単行本が3巻まで出ているだけの始まったばかりの漫画なので、今後どのような展開になるのかは分からない部分が多いのですが、漫画としてはなかなか面白いと思いました。
4巻以降の続きも気になります。


そもそも「お金」とは何なのか。「お金」はどのように生まれ、どのような歴史を経て現在に至っているのか、というような掘り下げたレベルから主人公は学んでいくので、読み手にも分かりやすくて勉強になります。日本の戦前や戦後の「お金」にまつわる歴史も、ツボをおさえながら興味深く描かれています。

ただし、投資そのものに関しては、ヘッジファンド的な血湧き肉躍るギャンブル要素が強そうなので、投資を疑似体験的に学んだり、ただ読み物として楽しむならよいのですが、普通の人の資産形成にはあんまり参考にならないような気がしました。



◎分散投資は意味がない?


例えば、第3巻の途中で「分散投資はダメ!」というセリフがあります。

そして、「歴史がそれを証明している」といいながら、アメリカの大天才投資家ウォーレン・バフェット氏を引き合いに出して解説します。しかし、誰もがバフェット氏のような成果を出せるわけがありません。

「分散投資は無知に対するリスクヘッジ」という言葉も紹介されていたので、言葉を逆に捉えて「無知でも分散投資をすれば、リスクをヘッジ(回避・軽減)できる」と読むこともできますが、作中では「分散投資なんかするな!」というようなネガティブな響きになっていました。

(ちなみに、そのウォーレン・バフェット氏も「普通の人は、銘柄選択なんかせずに、インデックスファンドを買って、ほったらかしておくのが良いだろう」というようなことを述べているのは有名なことです。)

「分散投資はダメ!」というのは、例外的な天才などが一発当てるための投資ならその通りでしょうが、普通の人が資産形成のために無難な投資をしようと思う場合には当てはまらないセリフだと思いました。

まぁ、作り話なので当然ですが、天才による計算と予測に基づく集中投資に再現性があるとは思えません(誰にでも同じことができるわけがありません)。



◎勘違いした初心者がヤケドをしないといいけど…


スリルや楽しさなどの刺激を求めて株式投資や為替取引を行うのはアリだと思います。私もそれ用の時間とお金があれば、やってみたいという気持ちはあります(多少かじったこともあります)。

また、投資をすることが本業(生業)の人は、全力で取り組んで上手に多くの利益を上げてもらいたいと思います(それが資本主義や市場経済を活性化させるでしょう)。

ただし、本業を別に持つ普通の人が、資産形成のためにFXを行ったり、個別株式を選別したり、レバレッジをかけたりするような手間のかかる投資を行うのが現実的なことだとは思えません。世界中のプロたちが、「自分だけは勝ってやろう!」と息巻いているマーケットで、安定的に利益を上げるのは簡単なことではありませんし、なによりも時間をとられます。

(個別の株式投資を否定しているわけではなく、普通の人や素人の資産形成の手段としてはハードルが高そうだ、と考えているだけです。念のため。)

もちろん、私が資産形成の手段として行っているインデックス投資みたいな面白くもなんともない投資方法を紹介しても、漫画のネタにはならないと思いますが、『インベスターZ』を読んだ投資初心者が、しっかり勉強さえすればミスなく株式投資や為替取引で勝てると思い込んで、大ヤケドをするような事態になってしまうことがないか少し心配です。
※インデックス投資は万能で、誰もがそれを選択するべきだ、なんてことは思っていませんが・・
(参考記事→インデックス投資とは
(参考記事→なぜインデックス投資を選んだのか



◎「ミスしないこと」の重要性


たしか第2巻で、「投資部」の主将がテニス部員とテニスの試合をします。
投資部の主将は、テニスボールの壁打ち練習しかしていないのに、なんとテニス部員に勝ってしまいます。

「ミスしないこと」を最優先にして、ボールを確実に相手のコートに打ち返すことだけに専念すれば、そのうち相手がミスをして、試合には勝ててしまうのです(現実問題としては、壁打ちの練習しかしていない人が実戦をノーミスで乗り切ることは難しいと思いますが・・)。

「ミスしないこと」を優先するのが有効な戦略であるのは、投資でも同じことですね。

このことは、インデックス投資家のバイブルとも呼ばれる名著『敗者のゲーム』で説かれている主題です(『インベスターZ』の中では、『敗者のゲーム』に話題が及ぶことはありませんが・・)。

『インベスターZ』を読んでいる人は、同時に『敗者のゲーム』も合わせて読んだらいいと思いました。



たかだか漫画にけっこうマジになってゴチャゴチャ書いてしまいましたが、読み物としての『インベスターZ』は面白いのでオススメです。

さて、貸してくれた同僚には、どんな感想を聞かせようかなぁ。。



※この記事が読まれてテレビ局から取材を受けることになりました。

取材に関する記事:『インベスターZ』の感想を大手テレビ局の某経済番組から求められたときの話



にほんブログ村 株ブログ 投資信託へ
↑記事を気に入っていただけたら、ランキングに1票をお願いします。

関連記事

プロフィール

虫とり小僧

Author:虫とり小僧


Twitter:@mushitori
Facebook:Facebookページ

子供の頃は、一日に800匹以上のバッタを捕まえるような虫とり少年でした。また、歩行中にはすべての家の「ピンポン」を必ず押すようないたずら小僧でもありました。今はただのザコです。

※好きなものは、歴史・格闘技(実践も観戦も)・筋トレ・秘湯めぐりなど



自分の全資産を「円」のみで保有していること(何もしないこと)は、それなりのリスクを伴う集中投資に近いものだと解釈して、私は購買力維持や資産形成を目的に、世界中の株式や債券なども保有しています。

約19年前から、なるべく手間とコストをかけずに実践している投資方法を、いつか我が子に伝えるかもしれないので、そのための備忘録を書いておくことにしました。

投資の実践といっても、ひと月に一度の自動積立と、たまにやるリバランスくらいですが…



※当ブログのエッセンスをまとめた記事はこちら

我が子に伝えたい5つの大切なお金のこと


※主なメディア掲載・出演履歴
BSテレ東マネーの学び:2022年10月13日
投資信託完全ガイド:2021-22年版
日経新聞広告:2021年2月12日
東証マネ部!:2020年8月
JBpress:2020年7月7日
ダイヤモンドZAi:2020年5月号
Yen SPA!:2020年夏号
トウシル(楽天証券):2020年4月
日経ヴェリタス:2019年9月15日
FOUND:2019年8月
週刊エコノミスト:2019年4月23日号
金融庁コラム:2018-19年
ITmedia:2018年1月29日
モノクロ ザ・マネー:2018年12月号
トウシル(楽天証券):2018年10月
ほったらかし投資完全ガイド:2018年1月
日経電子版:2017年12月25日
ニューヨークタイムズ:2017年7月11日
REUTERS・ロイター:2017年7月7日
東証マネ部!・R25:2017年3月
Yen SPA!:2016年冬号
BIG tomorrow:2016年1月号
ザイ・オンライン:2015年9月18日
日経ヴェリタス:2015年7月26日
某大手テレビ局:2014年夏?
日経マネー:2013年10月号
日経新聞:2013年7月3日
NHK特報首都圏:2011年3月

このエントリーをはてなブックマークに追加

読みやすくてオススメの本

金融のプロが実はやっている 最もシンプルで賢い投資の結論

投資理論の基礎から実践まで学べる最高の教科書。→参考記事


改訂版 一番やさしい!一番くわしい!はじめての「投資信託」入門

投資信託とは何なのかをやさしく解説してくれる本。→参考記事


お金は寝かせて増やしなさい

投資を始める前の自分に1冊だけ読ますならコレ。→参考記事


半値になっても儲かる「つみたて投資」

積立投資そのものを分析・解説している興味深い本。→参考記事


生命保険の罠

生命保険の販売現場のウラ話が満載の強烈な一冊。→参考記事

オススメのネット証券

楽天証券
管理人は個人型確定拠出年金(イデコ)でもここを利用。投信積立や残高で楽天ポイントがザクザク。キャッシュバックたっぷりの口座開設キャンペーンも多し。→参考記事

SBI証券
管理人もメインで利用中の最大手。低コストの商品が豊富で、月々100円からの積み立て投資に対応。投信保有ポイントサービスも高還元。個人型確定拠出年金(イデコ)も充実!

セゾン投信
リスク資産を1本の投資信託で管理したい人にオススメ。「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」は、月々5000円から投資でき、30カ国以上の株式と10カ国以上の債券に分散投資して、世界経済の成長を享受できる。→参考記事

月別アーカイブ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:


お返事できない場合もあります。また(ドコモ・auなどの)キャリアメールだと返信が届かないことがあります(参考解説記事)。

メッセージ内容はブログ記事に取り上げさせていただく場合があることもご了承ください。

注意事項等

当ブログでは個人的見解を述べているだけなので、他人の判断について責任は負えません。投資などを行う際は、あくまでも各自の責任においてお願いいたします。

リンクや引用なら問題ありませんが、無断転載はご遠慮ください。私は著作権を放棄しておりません。



アクセスカウンター

にほんブログ村 投資ブログ 資産運用(投資)へ