2014
Apr
05
『インベスターZ』(三田紀房著)を読んでみました
東大受験を題材にして大ヒットした漫画『ドラゴン桜』の作者・三田紀房氏の最新作『インベスターZ』を読んでみました。

昨年、週刊モーニングで「投資」を題材にした漫画の連載が始まったという話は色々なところから聞こえてきましたが、これまでは読む機会がありませんでした。
ところが先日、職場の同僚が「これ面白いですよ!」と、『インベスターZ』の単行本(1~3巻)を貸してくれたので、これ幸いと読んでみることにしました。

昨年、週刊モーニングで「投資」を題材にした漫画の連載が始まったという話は色々なところから聞こえてきましたが、これまでは読む機会がありませんでした。
ところが先日、職場の同僚が「これ面白いですよ!」と、『インベスターZ』の単行本(1~3巻)を貸してくれたので、これ幸いと読んでみることにしました。
職場内で「ちょっと投資に詳しいキャラ」に仕立てあげられてしまった私のところには、自然と投資に関する情報や相談が集まってくるようになっています。
年金の運用状況やアベノミクスについての質問を受けたり、「数年前に買って半値になったまま塩漬けとなっている投資信託をどうすればいいのか」はたまた「儲かる株はどれか?」、なんて相談を受けることが多いのですが、今回は投資漫画『インベスターZ』を手渡されて、その感想を求められました。
◎『インベスターZ』とは
『インベスターZ』は、中高一貫の超進学私立学校で各学年成績トップの生徒で密かに構成される「投資部」が、100年以上に渡って学園のすべての運営費を投資によって賄っているという設定の物語です。
その「投資部」に入部した中学1年生の主人公が、実際に投資を通じて色々と学んでいきます。
まだ単行本が3巻まで出ているだけの始まったばかりの漫画なので、今後どのような展開になるのかは分からない部分が多いのですが、漫画としてはなかなか面白いと思いました。
4巻以降の続きも気になります。
そもそも「お金」とは何なのか。「お金」はどのように生まれ、どのような歴史を経て現在に至っているのか、というような掘り下げたレベルから主人公は学んでいくので、読み手にも分かりやすくて勉強になります。日本の戦前や戦後の「お金」にまつわる歴史も、ツボをおさえながら興味深く描かれています。
ただし、投資そのものに関しては、ヘッジファンド的な血湧き肉躍るギャンブル要素が強そうなので、投資を疑似体験的に学んだり、ただ読み物として楽しむならよいのですが、普通の人の資産形成にはあんまり参考にならないような気がしました。
◎分散投資は意味がない?
例えば、第3巻の途中で「分散投資はダメ!」というセリフがあります。
そして、「歴史がそれを証明している」といいながら、アメリカの大天才投資家ウォーレン・バフェット氏を引き合いに出して解説します。しかし、誰もがバフェット氏のような成果を出せるわけがありません。
「分散投資は無知に対するリスクヘッジ」という言葉も紹介されていたので、言葉を逆に捉えて「無知でも分散投資をすれば、リスクをヘッジ(回避・軽減)できる」と読むこともできますが、作中では「分散投資なんかするな!」というようなネガティブな響きになっていました。
(ちなみに、そのウォーレン・バフェット氏も「普通の人は、銘柄選択なんかせずに、インデックスファンドを買って、ほったらかしておくのが良いだろう」というようなことを述べているのは有名なことです。)
「分散投資はダメ!」というのは、例外的な天才などが一発当てるための投資ならその通りでしょうが、普通の人が資産形成のために無難な投資をしようと思う場合には当てはまらないセリフだと思いました。
まぁ、作り話なので当然ですが、天才による計算と予測に基づく集中投資に再現性があるとは思えません(誰にでも同じことができるわけがありません)。
◎勘違いした初心者がヤケドをしないといいけど…
スリルや楽しさなどの刺激を求めて株式投資や為替取引を行うのはアリだと思います。私もそれ用の時間とお金があれば、やってみたいという気持ちはあります(多少かじったこともあります)。
また、投資をすることが本業(生業)の人は、全力で取り組んで上手に多くの利益を上げてもらいたいと思います(それが資本主義や市場経済を活性化させるでしょう)。
ただし、本業を別に持つ普通の人が、資産形成のためにFXを行ったり、個別株式を選別したり、レバレッジをかけたりするような手間のかかる投資を行うのが現実的なことだとは思えません。世界中のプロたちが、「自分だけは勝ってやろう!」と息巻いているマーケットで、安定的に利益を上げるのは簡単なことではありませんし、なによりも時間をとられます。
(個別の株式投資を否定しているわけではなく、普通の人や素人の資産形成の手段としてはハードルが高そうだ、と考えているだけです。念のため。)
もちろん、私が資産形成の手段として行っているインデックス投資みたいな面白くもなんともない投資方法を紹介しても、漫画のネタにはならないと思いますが、『インベスターZ』を読んだ投資初心者が、しっかり勉強さえすればミスなく株式投資や為替取引で勝てると思い込んで、大ヤケドをするような事態になってしまうことがないか少し心配です。
※インデックス投資は万能で、誰もがそれを選択するべきだ、なんてことは思っていませんが・・
(参考記事→インデックス投資とは)
(参考記事→なぜインデックス投資を選んだのか)
◎「ミスしないこと」の重要性
たしか第2巻で、「投資部」の主将がテニス部員とテニスの試合をします。
投資部の主将は、テニスボールの壁打ち練習しかしていないのに、なんとテニス部員に勝ってしまいます。
「ミスしないこと」を最優先にして、ボールを確実に相手のコートに打ち返すことだけに専念すれば、そのうち相手がミスをして、試合には勝ててしまうのです(現実問題としては、壁打ちの練習しかしていない人が実戦をノーミスで乗り切ることは難しいと思いますが・・)。
「ミスしないこと」を優先するのが有効な戦略であるのは、投資でも同じことですね。
このことは、インデックス投資家のバイブルとも呼ばれる名著『敗者のゲーム』で説かれている主題です(『インベスターZ』の中では、『敗者のゲーム』に話題が及ぶことはありませんが・・)。
『インベスターZ』を読んでいる人は、同時に『敗者のゲーム』も合わせて読んだらいいと思いました。
たかだか漫画にけっこうマジになってゴチャゴチャ書いてしまいましたが、読み物としての『インベスターZ』は面白いのでオススメです。
さて、貸してくれた同僚には、どんな感想を聞かせようかなぁ。。
※この記事が読まれてテレビ局から取材を受けることになりました。
→取材に関する記事:『インベスターZ』の感想を大手テレビ局の某経済番組から求められたときの話

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