2021
Aug
25
まさかの8資産均等推し!?…『金融のプロが実はやっている 最もシンプルで賢い投資の結論』(北村慶著)は最高の教科書
すべての日本人が読むべき投資の教科書と度々紹介している『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント(2006年出版)』の著者・北村慶氏が、久しぶりに庶民向けの投資本を出版しました。

日米の金融機関で役員経験を持ち、現役の一部上場企業CFOでもある著者が、普通の市民が行うべき投資の王道をやさしく解説してくれる一冊。
金融理論を知り尽くし、生き馬の目を抜く金融の世界で30年以上も最前線に立ってきた男が、個人資産の運用方法とそのパフォーマンスをも公開しています。

日米の金融機関で役員経験を持ち、現役の一部上場企業CFOでもある著者が、普通の市民が行うべき投資の王道をやさしく解説してくれる一冊。
金融理論を知り尽くし、生き馬の目を抜く金融の世界で30年以上も最前線に立ってきた男が、個人資産の運用方法とそのパフォーマンスをも公開しています。
◎この著者はヤバい
私が投資を始めた頃は、日本人が日本人向けに書いた「内容が正確で、裏付けとなる理論が分かりやすく説明してあって、かつ手間をかけずに誰にでも実践できそうな」投資を啓発する本はそんなに多くはありませんでした。
そんなとき(約15年前)に北村慶さんの本を読み、この人やべぇ!難しい話を省略しないのにメッチャ分かり易いやん!と衝撃を受けました。
当時、私は既に国際分散積み立てインデックス投資を始めていたので、あの本を自分の実践している投資スタンスの理論的な裏付けとすべく、じっくりじっくり読み込んだことを思い出します(参考:インデックス投資とは)。
【参考記事:私が最も影響を受けた投資本】
◎金融のプロが実践している投資とは
今回の新著では、北村慶さんが個人資産をどのような金融商品でどのように運用していて、どれくらいのパフォーマンスなのかも公開しています。
投資スタンスとしては、ご自身が提唱されてきた「長期・分散・積立」を愚直に実践しているという予想通りの内容です。が、意外だったのは実際にその投資をスタートしているのが私のような古参インデックス投資家よりも数年遅いこと(理屈だけの有識者とは一線を画すべく、理論を実践したのだと推測します)。
また、さらに意外というか、驚いたのは均等分散タイプのバランスファンドを資産運用のコアに据えてインデックス投資を実践し続けていたことです。
私からしてみれば、北村慶さんは師匠というか先生のようなものです。
もちろん、交流はおろか、お会いしたこともなく、こちらが一方的に書籍を読んで学ばせてもらっただけですが、その先生と10数年の時間の経て答え合わせをしてみたら、どビンゴだった、というわけです。
【参考記事:私がeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)を積み立てている理由】
◎株式100%派が幅を利かせる風潮の中で
私はこれまで、北村慶さんがバランスファンドをおススメしているのを見たことがありませんでした。
最近はインデックス投資家内でも、リスク資産は株式100%でいいというスタンスの人が圧倒的に増えており、バランスファンドを使うような「のんびり屋」は肩身の狭い思いをしています。
実際、私も株式100%のほうが効率的だとは思いますし、全世界株式インデックスファンドのいい商品も出ているので、これから投資を始めるのなら(ひょっとしたら)バランスファンドは使わないかもしれません。
【参考記事:実はもうオールカントリー1本、株式100%でもいいと思ってる】
ただ、個人の資産運用における本質的なところは、個別の金融商品や細かい資産配分にこだわることではないですし、個人的には国際分散積み立て投資を成功させるポイントは、あまり欲張りすぎず、ほどほどで満足することだと考えています。
なので、バリバリの理論派で金融のプロが均等分散型のバランスファンドを選んでいる事実は、非常に奥が深いと思ってしまいます。上げ相場もあれば、下げ相場もあることが分かっていて、リバランスの効果をきちんと理解しているからこそ、なのかなぁ…なんて考えてみたり。
※実は他にもバランスファンドを愛用している金融のプロを何人か知っています。
◎最新版の投資の教科書
本書は、長期投資の効果・分散の意味・積み立ての特徴などについて根拠を添えて説明し、「なぜ勝てるのか」を証明する勢いでロジカルに解説してくれます。
簡単に読める章ばかりではありませんが、資産形成のためにリスク資産にお金を投じるなら、一冊くらいはこういう教科書のような本を読んでおいたほうがいいでしょう。
北村慶さんは最近急に増えている「上げ相場しか知らない、ぽっと出のインフルエンサー」でありません。金融理論を知り尽くし、そして同時に人間の愚かさも理解している賢者です。それは本書を読めば分かると思います。
長期投資を続けていれば大きく下がることもあれば、停滞相場もあるという当たり前ながらつい忘れがちな前提を持ちつつ、賢い投資戦略を簡潔かつ妥協なく説明してくれる激推しの一冊です。
期待収益率やリスク、株式会社の利潤の仕組み、ポートフォリオ理論、投資商品の選び方、投資の続け方、バランスファンドの優位性と欠点、手数料の影響、効率市場のパラドックスやフリーライダー問題、投資対象にREITを加える意味(参考:Jリートについて思ってること)などなど、投資の根っこの部分の勉強を避けてきた人は必読、そしてマニア投資家にも読み応えがあるはずです。
比較的なホットな話題である老後資金2000万円問題、つみたてNISA、iDeCo※などをキッチリ抑えつつ、サテライト投資戦略としての暗号資産(仮想通貨)やESG投資などについても、けっこう詳しく言及しています。
《※参考記事》
・老後資金2000万円不足問題について思うこと
・確定拠出年金ってなによ?
・つみたてNISAってなんだ?
◎今はバブルなのか?
北村慶さんは本書の中で以下のように書いています。
「現在の市場は“コロナ・バブル”とでもいえる状態にあり、相場は乱高下を繰り返しながら、いずれ大きな調整(下落)を迎えることになる、と考えている」と。
世界の時価総額とGDPの関係、暗号資産の急騰、家計の過剰貯蓄、SNSによる投機煽りなど、様々な観点からその根拠を述べているのですが、同時に、たとえ今がバブルだとして、それが崩壊したとしても「金融のプロが実はやっている最もシンプルで賢い投資」をしていれば大丈夫だと書いています。
ほぼネタばれしている気もしますが、その「結論」と理由については、読んで直接ご確認ください。
【参考記事:バブルの見極め方と対策】
・・北村慶さんは朝日新聞のコラム「経済気象台」に「慶」というペンネームで寄稿していたり、金融庁の有識者検討会のメンバーでもあるらしいのですが、以前、金融庁の幹部にいると紹介した私の幼馴染の「ケイちゃん」とは別の人物です。念のため。
【参考記事:金融庁の幹部が寄稿してくれたよ、このブログにね】

↑記事を気に入っていただけたら、ランキングに1票(クリック)をお願いします。