2020
Apr
04
わりかん保険って何だ?…保険料「後払い」のがん保険!?
これまでになかった「透明性が高く、加入者同士の助け合いが実感しやすそうな」保険の発売を、主要な全国紙が一斉に取り上げて話題を集めたのは今年(2020年)1月下旬。
今さら遅いかもしれませんが、たまに保険ネタを扱うブロガーとして(また、過去には某マネー誌から保険ネタで取材を受けた変わり者として)、私も「わりかん保険」に触れておくことにしました。

※justInCaseのウェブサイトより(クリックで拡大)
一部の保障に限定されたものではありますが、「わりかん保険」は保険本来のかたちというか、そのあるべき仕組みを考えるうえで非常に参考になると思います(保険料はかなり安いので、保険会社は儲かりそうにありませんが…)。
※念のため最初に確認しておくと、「保険料」とは加入者が支払ういわゆる“掛け金”。「保険金」とは保険会社から加入者が受け取るお金です。
今さら遅いかもしれませんが、たまに保険ネタを扱うブロガーとして(また、過去には某マネー誌から保険ネタで取材を受けた変わり者として)、私も「わりかん保険」に触れておくことにしました。

※justInCaseのウェブサイトより(クリックで拡大)
一部の保障に限定されたものではありますが、「わりかん保険」は保険本来のかたちというか、そのあるべき仕組みを考えるうえで非常に参考になると思います(保険料はかなり安いので、保険会社は儲かりそうにありませんが…)。
※念のため最初に確認しておくと、「保険料」とは加入者が支払ういわゆる“掛け金”。「保険金」とは保険会社から加入者が受け取るお金です。
◎がんになった人の数で保険料が決まる
「わりかん保険」とは以下のような「がん保険」です。
・20~74歳まで加入可能で1年更新
→既にがんの診断を受けたことがある人は加入できない
・がん診断時に80万円を受け取れる
→これが少額短期(医療)保険の上限らしい
・支払われた保険金と経費を加入者で「割り勘(わりかん)」したものが毎月の保険料(毎月変動・後払い)
→加入者の中でがんの診断を受けた人が0人なら翌月の保険料は無料
→例えば、加入者1万人のうち3人に保険金を支払った場合、35歳の加入者の翌月の保険料は343円
→月額保険料には上限あり(20~39歳は500円、40~54歳は990円、55~74歳は3190円)
・個人が特定できない範囲で保険金支払い情報を加入者に開示
→保険金の使途や経費が分かりやすく、保険料が「人助け」に使われていることが実感しやすい
※死因に関係なく年齢別の死亡保障もあり(5万~300万円)
※詳細は引受保険会社:株式会社 justInCaseのウェブサイトをご参照ください
◎合理的なのに、助け合いを実感できそう
「助け合いグループ」に加入しておいて、お金を必要とする人が出たときに(運営会社の経費と合わせて)みんなで少しずつお金を出し合う。そして、自分に「万が一」が訪れたときには、みんなに助けてもらう。そんなイメージでしょうか。
保険料の上限になっても、これまでのがん保険より安いかも。
おそらく、保障内容を限定し保険料を後払いにすることで、保険会社のプールしておく資金を減らすことも可能になり、金融商品としての継続見通しが立てられたのだと思います。
入院・通院時の保障はありませんが、多くの場合、入院や通院で80万円も保険金を受け取れることはないですし、「がんになったら一発受け取って終わり」というのは分かりやすい。
そもそも、誰もが加入している公的な医療保険(健康保険)による7割給付と高額療養費制度を考慮すれば、たいていの場合、80万円あればカバーできる可能性が高いでしょう。
【参考記事:健康保険・高額療養費とは(交通事故による診療には健康保険が使えない?)】
◎大手生保への挑戦?それとも共存?
この保険を発売したjustInCase(ジャストインケース)という会社のCEOである畑和寿也さんは、司法試験よりも難しいといわれるアクチュアリー(保険数理人)の資格を持ち、15年間も保険設計に関わる仕事をしていたそうです。
保険の「原価」を分かっている人が、こういう「キレイごと」を地で行くような商品を作るとはなんとも眩しく見えてしまいます。(商品にもよるでしょうが)民間の保険会社の暴利の貪り具合に心を痛めていたのかもしれません。
私の知る限り、大手生保は直近3年の離職者数すら開示していない。他業界の大手企業でそういうところはほとんどありません。保険というのは金融商品なので、離職者数はともかく、集めた保険料の使われ方の内訳くらいは開示してもらいたいものです。
「わりかん保険」の積極的でガラス張りの情報開示は、大手生保への挑戦状なのかと思いきや、なんと最大手の日本生命や外資系のチューリッヒなどがパートナー(販売代理店)として販売に協力しています。他にも新生銀行やネット生保のライフネット生命なども。
それらの代理店は「わりかん保険」をドアノック商品として使うのか、いずれ会社ごと買収したいのか、それとも金融庁に対するポーズなのか……大手生保等での取り扱いには色々考えてしまいます。
この保険の意義と合理性を日本人は受け入れるのか、既存の生保との棲み分けはできるのか、数理計算上想定しづらい「何か」が起きても耐えられるような構造になっているのか、既存生保が同様の商品をより安く作り始めても事業継続可能なのか……気になる点は多くありますが、サンドボックス制度という生産性向上特別措置法に基づく実証実験制度において、保険では最初に認定を受けたものらしいので、今後どうなるのかに注目してみたいと思います。
◎私はわりかん保険に加入するのか
共済とけっこう似ている気もしますが、「わりかん保険」の保障のそぎ落しっぷりや情報開示っぷりは、多くの人にとって、保険のあるべき仕組みや必要最低限の保障を考えるいい教材になるような気がします。
【参考記事:県民共済がネット申し込み可能に】
今回、justInCaseの「わりかん保険」をけっこう持ち上げましたが、じゃあ、これまでの保険商品が不要なのかといえば、そんなことはなく、万が一のときのための高額保障を確保するには、これからも既存の保険会社の商品を使う必要があるでしょう。
また、既に40歳を超え、そこそこの蓄えもできてきた私は「わりかん保険」に加入することはないと思います。だって80万円以上の金融資産を持っていますし、どうせがん保険に加入するなら(そうなる可能性は低くとも)入院日数無制限の保障くらいは欲しいと思うからです(そのあたりに既存生保との棲み分けの可能性があるのでしょう)。
ただ、もしも私が若くて貯金も少ない頃だったら、おそらく「わりかん保険」を前向きに検討していたはずです。
加入者が増えるごとに経費(管理費)の割合を下げていくような、どこかの投信会社みたいになったら面白いなぁ……なんてことも思っています。
・・投資信託と同じで、保険にも、ヒドいぼったくり商品もあれば低コストで良質なものもあります。賢く選びたいものですね(参考:投資信託とは)。
※私の保険に対する基本的な考えは、以下のリンク先記事にまとめてあります(当ブログの人気記事のひとつです)。
↓
民間の保険はどの程度必要なのか、5つのポイントで検証(生命保険・医療保険・学資保険・火災保険など)

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