2020
Feb
29
野村スリーゼロ先進国株式投信について思うこと…信託報酬0%の次はマイナスか?
証券業界最王手のノムラから信託報酬0%のファンド(投資信託※)設定が発表されたことで、マニア(私のような投資ブロガーなど)の間ではけっこう話題になっています。

ファンド名は「野村スリーゼロ先進国株式投信」。
ついに、国際分散投資の最もメジャーな株式指数のひとつに連動するインデックスファンドの信託報酬(運用管理費用)が無料になりました。
当然、販売手数料(購入時手数料)や解約手数料(信託財産留保額)も無料です。低コスト化競争極まれり、って感じでしょうか。
※投資信託とは

ファンド名は「野村スリーゼロ先進国株式投信」。
ついに、国際分散投資の最もメジャーな株式指数のひとつに連動するインデックスファンドの信託報酬(運用管理費用)が無料になりました。
当然、販売手数料(購入時手数料)や解約手数料(信託財産留保額)も無料です。低コスト化競争極まれり、って感じでしょうか。
※投資信託とは
◎野村スリーゼロ先進国株式投信
冒頭にも書きましたが、日本を除く主要な先進国(外国)の株式指数(MSCI-KOKUSAI指数の円換算ベース・為替ヘッジなし)への連動を目指すインデックスファンドが、2020年3月16日から野村グループ(野村證券株式会社・野村アセットマネジメント株式会社・野村信託銀行株式会社)で取り扱われるようになります。
販売手数料(購入時手数料)・信託報酬(運用管理費用)・売却手数料(信託財産留保額)の三つも、販売会社・運用会社・受託銀行の三社の受け取る信託報酬もゼロになるようです。
運用はまだ開始されていないので、確かなことは言えませんが、運用会社の野村アセットマネジメントのマザーファンドの規模や実績から推測するに、おそらく商品性そのものに問題はないと思われます。
同じ指数をベンチマークとするインデックスファンドの運用は、基本的にどの運用会社でもほぼ同じになるため、そのパフォーマンス差は、ずばり「コスト(主に信託報酬)」が決定的な要因を占めます※。
つまり、「野村スリーゼロ先進国株式投信」は、(他の運用会社がゼロコストに追随しないかぎり)主要な先進国の株式指数に連動するインデックスファンドとしては最も高いパフォーマンスを上げる可能性が高いのです。
※マニア目線で見れば、運用会社によるファンド運用の巧拙や実質コスト※※などもパフォーマンス要因にはなるのですが、そんなものは普通の人が気にするような話ではないと思います。
※※投資信託の「実質コスト」という言葉は、信託報酬等の事前に分かっている手数料に「その他コスト(運用報告書を見て計算しないと分からない手数料)」と「隠れコスト(運用報告書を見ても分からないコスト)」を合わせたもの、という意味で私は使っています。
◎把握しておくべき点
デメリットというほどの話ではないかもしれませんが、このファンドを買うには、いくつか留意しておくべき点もあります。
野村スリーセロ先進国株式投信は、今のところ、
・つみたてNISA限定
・信託報酬が0%なのは10年間
・売り手としては、単品では売れば売るほど赤字
・(おそらく)野村證券のオンラインサービス限定
のようです。
上に箇条書きしたことについて、もう少し詳しく書きましょう。
つみたてNISA限定だと、年間40万円が投資上限なので、まとまった大きな資金を一気に投じることはできません。したがって、実際に受けられる金銭的なメリットはごく小さなものになります。
投資可能枠をフルに使ったとしても、二番目に低コストなファンドとのコスト差によって得られる実益は、最初の数年間は数百円程度、残高が積み上がってもランチ代程度でしょうか。
ただし、それも楽天証券
《参考記事》
・SBI証券と楽天証券、今から投資を始めるならどっちにするか
・楽天証券さん、最強までもう一歩!…楽天カード投信積立ポイント還元によせて、イデコ関連の要望なんかも
また、信託報酬ゼロは恒久的なものではなく、2030年12月31 日までだということも押さえておきたいポイントです(その後も、税抜0.1%以内で同種ファンドにおける業界最低水準を目指すとのことなので、資金が集まって、きちんと運用が続くのなら最安であり続けるはずですが)。
それと、この「野村スリーゼロ先進国株式投信」という金融商品は、売り手としては(単品では)売れば売るほど赤字になります。ドアノック商品ってやつになるのでしょうか。
野村グループが社会貢献活動だと割り切っていないかぎり、その赤字をなんらかの形で回収しようとするのは当然のことなので、優秀で貪欲な営業マンから他の金融商品を売り込まれる可能性もあるでしょう。
あと、おそらくこの投資信託が買えるのは、野村證券のオンラインサービスのみです。この商品だけでリスク資産への投資のすべてを完結させられる人は多くないと思うので、管理する証券口座が増えてしまうことを面倒に感じる人もいるはずです。
・・上記のようなことを分かったうえで、一人に一つだけのNISA口座を野村證券で開設して、件のファンドを積み立てるメリットがあるのかどうかは、まさに人それぞれでありましょう。
◎あのライバルファンドはどうするのか
さて、マニアとして気になるのは、既に「同種ファンドの最低水準コストを続ける方針」を標榜・実践している三菱UFJ国際投信のeMAXIS Slimシリーズの同種ファンド(先進国株式インデックス)がどう対応するのか(追随値下げするのか)です。
実は(私だけではないかもしれませんが)、eMAXIS Slimシリーズのコンセプトが世に出たとき、もしも自分が資金力のあるライバル会社の意思決定者なら、スリムシリーズを潰す(値下げさせるだけの)ために「捨てファンド」を作ったりして……なんてことを考えていました。
野村スリーゼロ先進国株式投信はそれだけのためのものではないでしょうが、プレスリリースを見たとき、一瞬「ついにきたか?!」と思ってしまいました。
でも、売ってもあまり儲からない商品と、売れば売るほど赤字になる商品は別物ですし、過当競争の末に日本のインデックスファンドそのものがダメになってしまうのは困りものです。
個人的には、期間限定の「信託報酬ゼロ」に追随する必要はないのかなぁ、と思っています(可能な範囲で充分)。
◎私はどうするのか
なんだか、最初持ち上げてから落とす系の書き方になっていますが、サービスの向上やコストの低減化は個人投資家にとって悪い話ではありません。
ただ、(繰り返しますが)世紀末的な値下げ競争の末にサービス(商品)提供が続けられらなくなって、最終的に個人投資家がそのあおりを受けるの勘弁願いたいです。
私の場合は、既に自分の投資スタンスが出来上がっているので、わざわざそれを変えてまで今回取り上げた「野村スリーゼロ先進国株式投信」を利用することはない、というのが今のところの判断です(参考:アセットアロケーションの決め方)。
要するに、野村スリーゼロ先進国株式投信は、安いけど、二番手商品と大差はない(というか考えようによっては逆転し得る)し、商品の乗り換えはめんどくさいからスルー、ということです。
そもそも私は、(ブログにはこうやってゴチャゴチャ書くものの、自分で実践する投資については)あまり細かいことにはこだわらず、欲張り過ぎず、ほどほどのバランスで継続できればOKというスタンスなので。
【参考記事:インデックス投資を成功させるための3つのポイント】
このファンド設定のニュースを見たとき、「すわ信託報酬ゼロの次はマイナスもあるかも?」なんてことも思ったのですが、楽天グループのやっていることも(他社との合わせ技ですが)既にマイナス信託報酬のようなものだったりするので、落ち着いて考えると、さほどの驚きはないかも……みたいなテンションになっております。

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