2018
Jan
20
『図解 知識ゼロからはじめるiDeCo(個人型確定拠出年金)の入門書』(大江加代著)を読んだ感想・レビュー
◎大江加代さんとは
大江さんは、大手の証券会社に勤務していたころからずっと、勤労者の福利厚生色の濃い制度の実務を専門的に担当していたそうです。
確定拠出年金についても、法整備がなされる前から現場で深くかかわっていた第一人者で、NPO確定拠出年金教育協会の理事でもあります(同協会の運営する情報サイト「iDeCoナビ」は金融機関や金融商品の情報が網羅されていて秀逸)。
お金の専門家であるFP(ファイナンシャルプランナ-)や日本の頭脳たる霞ヶ関の国家公務員へのセミナーなどでも講師を務めるほどの超プロである大江さんが、個人型の確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」について庶民向けの解説本を書いてくれました。
ちなみにこの大江さんの旦那様は、新聞・雑誌・テレビ等のメディアに引っ張りだこの著名な経済コラムニスト・大江英樹さんです。
◎読みやすさに心を砕いてある一冊
じっくり読んでみましたが、とにかく説明の仕方や言葉の選び方がとても丁寧で、分かりやすく説明しようという誠意に溢れているような印象を受けました。
ひとつのテーマを必ず見開き2ページで完結させていて、しかも図解つき。文字数制限のあるなかでまとめるのはかなりの難作業だったでしょう。頭が下がります。
イデコを始めるにあたっての、資料の取り寄せ方から、申し込み方法、そして確定申告のやり方、さらには様々なパターンの受け取り方、申請方法、転職したときなど持ち運び方、脱退や自動移換、金融機関の変更方法など、とにかく個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)をやるうえでの具体的な手続きに特化した一冊です。
《参考記事→確定拠出年金ってなによ?…メリット・デメリット・注意点は?…企業型と個人型の違いやオススメの証券会社は?》
◎「入門書」というか「取扱説明書」
私はこれを読んでいて、家電製品の取り扱い説明書を連想しました。それくらい詳しくひとつひとつのステップが解説してあります。
しかしその一方で、株式や債券などのリスク商品に投資したほうがよい根拠や実際の商品選びなどについては、さほど詳しく書かれてはいません。具体的な金融機関名や商品名も出てこないので、これを読んだだけでは実際どう運用すればいいのか分からない人もいるかもしれません。
そういう意味でも、この本は、イデコをやろうとしている人、もしくはすでにやると決めた人向けの実務書というか取り扱い説明書だと思いました。
この記事の最後に紹介している竹川美奈子さんや田村正之さんの本で、商品選びや運用のイロハなどを学べば、上手に補完できるかもなぁ、なーんて思いもしました。
◎本書の目次
どんな本なのかイメージしやすいように、目次をコピペしておきます(すごく濃密な本だということが分かると思います)。
第1章 確定拠出年金と老後のお金
老後のお金 準備が必要な老後の生活資金
年金の種類 国の年金・会社の年金・じぶん年金
「じぶん年金」の種類 いろいろある「じぶん年金」
「会社の年金」の種類 自分がどの年金に入っているか確認する
iDeCoへの加入の可否 iDeCoに加入できないケース
企業型と個人型の違い 企業型確定拠出年金
毎月の掛け金の上限額 職業や立場で掛け金が異なる
コラム 「ねんきんネット」を利用する
第2章 iDeCoで老後の資産づくり
iDeCoの3つのメリット 税金・コスト・しくみのメリット
税金のメリット① 掛け金の全額が控除される
税金のメリット② 運用益に税金がかからない
税金のメリット③ 受け取り時にも税優遇がある
コストのメリット① iDeCoは投資信託の手数料が安い
コストのメリット② 手数料は運用管理費用をチェックする
30年の積み立てと運用 長期間の運用で大きな差が生まれる
しくみのメリット① 老後資金が自動的に確保される
しくみのメリット② 手間がかからない資産運用
主婦が加入するメリット 運用益の非課税や退職所得控除が魅力
コラム 「iDeCo」と「NISA」「つみたてNISA」
第3章 iDeCoの始め方
iDeCoの運営や管理 運営管理機関の役割を理解する
運営管理機関選び① 運営管理機関は慎重に決定する
運営管理機関選び② まず商品ラインナップをチェックする
運営管理機関選び③ 運用商品のコストに注意する
運営管理機関選び④ 加入者向けサービスを確認する
運営管理機関選び⑤ 口座管理料よりも運用管理費用に注目する
iDeCoへの加入手続き 立場によって必要書類や手続きが異なる
iDeCoの申し込み 資料の取り寄せから申し込み完了まで
申込用紙の書き方 記入例を見て漏れがないように注意する
加入申出書記入のポイント(第1号被保険者の場合)
加入申出書記入のポイント(第2号被保険者の場合)
加入申出書記入のポイント(第3号被保険者の場合)
掛け金の上限額の証明 事業主に証明書の作成を依頼する
事業主の証明書
税の還付 年末調整や確定申告で還付を受ける
小規模企業共済等掛金払込証明書
放置していた資産の手続き 放置資産を自分の口座に移動する
コラム 積み立てを再開する
第4章 投資信託の選び方と運用方法
iDeCoの資産運用① 面倒なことや難しいことはなし!
iDeCoの資産運用② 安定的に収益をあげやすいしくみ
運用できる金融商品 元本確保型商品と価格変動商品がある
投資信託の種類① 投資信託は「何に」と「どこに」で見る
投資信託の種類② 投資初心者も始めやすい「バランス型」
投資信託の種類③ 「パッシブ型」か「アクティブ型」かで考える
元本確保型商品① iDeCoの定期預金で知っておくこと
元本確保型商品② iDeCoの保険商品で知っておくこと
商品選択① どれだけのリスクを取れるのか考える
商品選択② 投資信託はコストで選べば問題なし
商品選択③ 「アクティブ型」のコスパは未知数
分散投資の考え方① 長期の運用では幅広く分散投資する
分散投資の考え方② 理論的に正しい分散投資の方法
分散投資の参考例 自分に適した資産配分
運用に関する注意点 資産運用を行う際の2つのポイント
コラム 投資信託の値段は1日に1つ
第5章 年金資産の管理
残高の確認方法 自分のiDeCo資産を確認する
加入者向けウェブサイト パソコンやスマホでいつでも確認できる
コールセンター 運営管理機関に直接質問できる
短期的な値動き 保有資産の増減に一喜一憂はNG!
運用を変更する方法① 売買を行って保有商品を入れ替える
運用を変更する方法② 掛け金の配分割合を変更する
資産のメンテナンス リバランスで資産配分の割合を調整する
商品情報の確認 お得な商品が登場することもあり!
コラム シミュレーションを活用する
第6章 iDeCoの受け取り方法
iDeCoの給付金 60歳から受け取るのが原則だが例外も!
老齢給付金の受け取り方 「まとめて」か「少しずつ分割」かを選ぶ
年金と一時金はどちらが得 税金と手数料から考えてみる
「年金」で受け取る場合のポイント 公的年金額が少ない人は「年金」がお得!
「一時金」で受け取る場合のポイント 退職金が少ない人は「一時金」がお得!
「死亡一時金」による受け取り 万が一の場合は一時金で遺族が受け取る
障害給付の手続きと受け取り方 障害を負った場合は60歳前でも支給される
受け取りのタイミング 有利なタイミングを見計らって受け取れる
iDeCoの給付申請 「自分で申請」しないともらえない!
コラム iDeCoの受け取り方は人それぞれ
第7章 状況別! 困ったときの対処法
年金資産の持ち運び 転職しても老後資金づくりを継続できる
確定拠出年金の持ち運び方法① 企業型を導入していない会社に転職する場合
確定拠出年金の持ち運び方法② 企業型を導入している会社に転職する場合
確定拠出年金の持ち運び方法③ 公務員・専業主婦(夫)になる場合
確定拠出年金の持ち運び方法④ 自営業やフリーランスになる場合
手続き漏れと自動移換 デメリットばかりの自動移換に要注意
脱退一時金 中途引き出しは原則できないと考える
積み立ての中断や金額変更 中断も可能だが、積み立ての継続が重要
運営管理機関の変更 変更は可能だが2つの注意点がある
運営管理機関の比較 70以上の運営管理機関を比較検討できる
確定拠出年金における財産の保護 解雇や破産の場合も法的に保護される
【当ブログオススメの関連書籍】
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※参考記事→『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』(竹川美奈子著)を読んだ感想・レビュー
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※参考記事→『はじめての確定拠出年金』(田村正之著)を読んだ感想・レビュー

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