いつか子供に伝えたいお金の話

インデックス投資(投資信託を使った国際分散投資)による資産運用・各種保険・クレジットカード・節約など「お金」に関することを書き綴るブログ

17.7兆円の損失を出した年金運用だけど、実はけっこう上手く運用してる

「私たちの年金がギャンブルに利用され、消えている!」
「大切な年金の運用では、絶対に損失があってはならないんだ!」
「政府は年金積立金を公共事業にバラまいたり、不正流用してるらしい……」

年金積立金の運用成績がある一定期間マイナスになると、そのことをメディアが大々的に報じ、庶民は「けしからん!」と不満の声を上げ、変な噂が流れたりもします。

んでも、長期・国際分散・低コストの運用を実践している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、コロナショックでヤラれているような多くの個人投資家よりもはるかに上手な運用をしているのです。



◎年金運用そのものはけっこう優秀


たしかに、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2020年1-3月期の運用で約17.7兆円のマイナスになっています。

でもね……

市場運用を開始した平成13年度(2001年)からの累積収益額は57兆円を超えているんでっせ。

GPIF2020.jpg
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のサイトより


きちんとそのこととセットで報道するメディアは少ない気がしますし、ワイドショーなどではそんなことには一言も触れない場合が多いようです。

もちろん、GPIFのこれまでの資産配分比率変更の変遷やそのタイミングには、私も多少は言いたいこともありますが、大枠でとらえれば、

国の年金運用はけっこう手堅く上手にやっている


というのが、現在の私の率直な感想です。

※運用しているのは年金給付財源のごく一部なんですけどね。



◎リスクとリターンは表裏一体


絶対に損失を出さない運用は、利益も出せない運用ということになります。仮に運用開始からずっと国内債券だけで運用していたら、ほとんど増えていなかったでしょう。

一時的な損失を許容するからこそ、長期的なリターンが見込めるわけです。さらに、下がっているときに買い増し、上がっているときに部分売却する(リバランスする※1)ことで利益が底上げされていきます。

また、そもそも実質価値の観点で見れば、絶対に損失の出ない運用なんてありえません。これは年金でも個人の金融資産でも同じことです。

金融資産がある以上、それは必ずどこかに置いておかねばならないのです。

【参考→いつまで資産運用(投資)を続けるのか


・・実は、私が国際分散インデックス投資※2の有用性を認識した理由のひとつに、年金運用を見習った、というのもあります。

2006年に出版された『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント―ノーベル賞学者とスイス人富豪に学ぶ智恵』という本を読んで、年金運用の実態を知り、リバランスの効果などをまざまざと見せつけられ、「なるほど、長期的な資産運用とはこういうものか」と納得したものです。

【参考→『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント』(北村慶著)を再読しました(感想・レビュー)



◎叩きやすいサンドバックを晒すのがメディアの仕事


人間というものは、自分を安全圏に置いたうえで、何かしら「叩ける」対象を常に欲しているもののようです。

政治家の不正を暴いて糾弾するような話題は、いつの世でも爆発的な注目(視聴率)を集めます。

メディアは常に叩く対象や、感動できるものを探し続けています。それが彼らの仕事ですし、必ずしも悪いことではありません。むしろ結果として、世の中が良い方向に動くようなケースもたくさんあります。

「お上(かみ)のやるこたぁ、納得できねえ!」というのは、昔からよくある典型的なパターンですし、現代は言論の自由でやり放題です(私も調子に乗ってたまにやります)。



◎でも、何かを叩くときは気をつけてね


年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2020年1-3月期の運用で17兆円以上のマイナスになったことは事実ですが、そのニュースを受けて、誰がどんな反応をするのかを、私はひっそりと観察しています(いやらしくてスンマセン)。

もちろん、誰もが現在の年金運用を肯定すべきだなんてことは思ってはいません。人はそれぞれの考えを持っているでしょう。自分とは異なる意見を言う人の話に耳を傾けることは、人間としての「幅」を増やす貴重な機会だと私は思っています。

ただし、何か(誰か)を叩くときは、その前提条件となる背景を知り、正しい基礎知識を持っていないと、自分でも気づかぬうちに大恥をかいていることがあるかもしれません。

例えば、年金問題を論じる際に押さえておきたい基本知識のひとつとして、「現役世代の支える高齢者」ではなく「就業者一人が支える非就業者の数」という観点で見ると、1950年代から今日(こんにち)、そして2060年くらいまでさほど変わらないというようなことは知っておきたいとかそういう話です。

自戒も込めて……。

【参考→老後資金2000万円不足問題について



◎参考図書:年金運用そのものではなく、けっこう難しい社会保障全般の本ですが

※1 リバランスとは、一定の期間(や乖離率)ごとに、最初に決めたアセットアロケーション(資産配分)比率より上がっているもの(アセット)は売却(利食い)し、下がっているものは買い増(逆張り)して元に戻すこと。主目的はリスクコントロールですが、株価や債券価格や為替などの上下循環(下がってもまた上がる・上がってもまた下がる)を前提とすれば、長期的には高パフォーマンスに寄与します(参考:上げ相場でリバランス売りをしといてよかった)。

※2 参考記事:インデックス投資とは


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プロフィール

虫とり小僧

Author:虫とり小僧


Twitter:@mushitori
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子供の頃は、一日に800匹以上のバッタを捕まえるような虫とり少年でした。また、歩行中にはすべての家の「ピンポン」を必ず押すようないたずら小僧でもありました。今はただのザコです。

※好きなものは、歴史・格闘技(実践も観戦も)・筋トレ・秘湯めぐりなど



自分の全資産を「円」のみで保有していること(何もしないこと)は、それなりのリスクを伴う集中投資に近いものだと解釈して、私は購買力維持や資産形成を目的に、世界中の株式や債券なども保有しています。

約18年前から、なるべく手間とコストをかけずに実践している投資方法を、いつか我が子に伝えるかもしれないので、そのための備忘録を書いておくことにしました。

投資の実践といっても、ひと月に一度の自動積立と、たまにやるリバランスくらいですが…



※当ブログのエッセンスをまとめた記事はこちら

我が子に伝えたい5つの大切なお金のこと


※主なメディア掲載・出演履歴
BSテレ東マネーの学び:2022年10月13日
投資信託完全ガイド:2021-22年版
日経新聞広告:2021年2月12日
東証マネ部!:2020年8月
JBpress:2020年7月7日
ダイヤモンドZAi:2020年5月号
Yen SPA!:2020年夏号
トウシル(楽天証券):2020年4月
日経ヴェリタス:2019年9月15日
FOUND:2019年8月
週刊エコノミスト:2019年4月23日号
金融庁コラム:2018-19年
ITmedia:2018年1月29日
モノクロ ザ・マネー:2018年12月号
トウシル(楽天証券):2018年10月
ほったらかし投資完全ガイド:2018年1月
日経電子版:2017年12月25日
ニューヨークタイムズ:2017年7月11日
REUTERS・ロイター:2017年7月7日
東証マネ部!・R25:2017年3月
Yen SPA!:2016年冬号
BIG tomorrow:2016年1月号
ザイ・オンライン:2015年9月18日
日経ヴェリタス:2015年7月26日
某大手テレビ局:2014年夏?
日経マネー:2013年10月号
日経新聞:2013年7月3日
NHK特報首都圏:2011年3月

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