2013
Feb
28
テレビ出演の影響(その1・一喝編)【投資に対する世間のイメージ】
数年前、個人投資家としてNHKのテレビ番組に、ちょこっとだけ出演したことがあります。
たしか、「うまい話に騙されないために」というような題名で、普通の個人が怪しい金融商品にボッタクられたり、極端な投資法に手を出して失敗したりしないように、しっかりとした金融リテラシーと情報ネットワークを持とう!というような内容の番組でした。
私の出演そのものは、ほんの数秒であり、「あんまり欲をかき過ぎても、ロクなことにはならないよね」というようなことをコメントしただけです。
ところが、NHKのゴールデンタイムの影響力はゴールデンボンバーだったようで、少なからぬ知人から連絡を受けました。
たしか、「うまい話に騙されないために」というような題名で、普通の個人が怪しい金融商品にボッタクられたり、極端な投資法に手を出して失敗したりしないように、しっかりとした金融リテラシーと情報ネットワークを持とう!というような内容の番組でした。
私の出演そのものは、ほんの数秒であり、「あんまり欲をかき過ぎても、ロクなことにはならないよね」というようなことをコメントしただけです。
ところが、NHKのゴールデンタイムの影響力はゴールデンボンバーだったようで、少なからぬ知人から連絡を受けました。
まずは、番組放映中に、職場の元ボス(当時既に退職)から電話がかかってきました。
「おい!いいか!投資なんて所詮ギャンブルだ!金を使わないことが一番だ!投資なんかするんじゃない!!」
と、いきなり一喝されました。
既に高齢者である元ボスの声は怒りに打ち震えており、電話越しにも手と唇の痙攣が伝わってきました。
農耕民族たるコツコツ預貯金貯蓄体質が身に染み付いた元ボスには、私のことが一発狙いの不遜極まりないギャンブラーのように見えたのでしょう。
私は、ハラビロカマキリの襲撃に怯えるウスバカゲロウのように恐縮しつつも、
「あ、いや、あの、自分は、そのようなギャンブルや怪しい投資話に騙されないための金融リテラシーの啓発活動の一端を……」
と、そのくらいまで言いかけたところで、
「バカモン!!」
と、再び怒りの雄叫びを浴びせかけられました。
相手の言い分に一定の正当性を感じたとき、「バカモン!!」という言葉とともにすべてを封殺し、反論の余地を与えぬ見事な雄叫びでした。
この理不尽な雄叫びを使いこなすことで、難しい交渉や社会の荒波を乗り越えてきた男の凄みがそこにはありました。この元ボスは、既に引退しているとはいえ、当時まだ業界内の多くの名誉職を兼任するフィクサー的な存在のお方でした。
「も、申し訳ありませんっ!」
自分に非があろうがなかろうが、そんなことは関係ありません。私は瞬時の判断で、最大の防御シールド「謝罪の言葉」カードをきりました。
電話越しであってもキチンとしたお辞儀を怠らぬ社畜道ど真ん中のストレート的なヤツをブチかましました(「も、申し訳ありません!」という言葉の後に、声にならない震える声をかすかに受話マイクに送り込むところがポイントです)。
場外ホームランを打った後のデストラーデのガッツポーズ級の謝罪を、業界フィクサーの元上司に喰らわせたのです。
私と元ボスの間に、暫しの沈黙が流れました。
鼓膜を心地よく愛撫する「謝罪の言葉」を味わっていたのでしょう。
その後、元ボスはゆっくりと言葉を続けました。
「いいか、よく聞きなさい。近い将来、日本は必ず財政破綻する。そのときに備えて、他国の財政破綻の例をしっかり勉強しておくんだ。投資なんかよりも、そういう勉強の方がずっと大切なのだよ!それからね……」
元ボスはおそらく、私に対して何かそれらしいことを言ってやろうと思ったのでしょう。新橋のサラリーマンが酔っぱらって即席の組織論を力説するかのごとく、付け焼刃の国際金融論らしきものを垂れ流し始めました。
当然、私は既にそういう事例(他国の財政破綻など)の勉強をそれなりにしていました。自分なりの勉強と思考の結果として、日本が財政破綻するかどうかは別にしても、そういう事態への現実的な対策こそが国際分散投資だろうと考えていたのです。
(参考記事→預金封鎖にはどのような対策をすればいいのか?)
しかし、そこは私も社畜のなかの社畜。そんなことをズケズケと電話で主張したところで、その先にあるものが元ボスの怒り再燃以外にはないことはよく心得ています。
ひたすら深い相槌を打った後に、
「な、なるほど!さすが○○先生!勉強になります。いまのお言葉、肝に銘じておきます。ありがとうございました!」
と、これまでに一度も呼んだことのない「先生」などという呼称を活用して、昭和の下町でコロッケ屋の三男坊がバッタリ出くわした長島茂雄にサインをもらえたかのような感動ボイスで、元ボスを気持ちよくさせるためだけの言葉を受話マイクに送り込みました。
投資に対して世間の人が持っているイメージがよく分かった点において、とても勉強になったのは事実だ、などと、情けない自分自身への言い訳のような思いを心の中で噛み締めながら……
電話のせいでリアルタイムの番組放映が見れなかったこと(電話を取ってしまったこと)を悔やみつつも、無事に会話を終えたことに、私はひとまずの安堵を覚えました。
しかし、元ボスからの電話は、序章に過ぎませんでした。
このあと、テレビ出演の影響と世間が「投資」に対して持っている悪いイメージをイヤというほど思い知らされることになります。
つづく
「テレビ出演の影響(その2・うわさ編)【投資に対する世間のイメージ】」へ
…「いつか子供に伝えたいお金の話」ではなく、「いつまでも子供には知られたくない父親の社畜姿の話」になってますね。。

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