2014
Oct
15
セゾン投信に日本郵便が出資し、資本・業務提携する件について
既にあちこちで話題になって考察が述べられていますが、2014年9月26日、個人的には大変興味深いニュースが飛び込んできました。
なんと、日本郵政グループの日本郵便が、クレディセゾン(セゾン投信の親会社)と資本・業務提携を結び、セゾン投信の株式40%を取得(第三者割当増資を8億円で引き受け)するというのです。
日本郵便といえば、一応民営化されたものの実質的には、いまだ国営企業です。そんな実質的な「お上」の実質的な「傘下」になることは、今後のセゾン投信にどのような影響を与えるのでしょうか。
(もちろん、完全な傘下ではありませんが、3分の1以上の株式保有だと、取締役の解任権までは持たないものの、重要事項の特別決議のいわゆる拒否権は持つことになります。)
なんと、日本郵政グループの日本郵便が、クレディセゾン(セゾン投信の親会社)と資本・業務提携を結び、セゾン投信の株式40%を取得(第三者割当増資を8億円で引き受け)するというのです。
日本郵便といえば、一応民営化されたものの実質的には、いまだ国営企業です。そんな実質的な「お上」の実質的な「傘下」になることは、今後のセゾン投信にどのような影響を与えるのでしょうか。
(もちろん、完全な傘下ではありませんが、3分の1以上の株式保有だと、取締役の解任権までは持たないものの、重要事項の特別決議のいわゆる拒否権は持つことになります。)
◎普通に考えると、心配になってしまうけど・・
最初にこのニュースを目にしたときに私が受けた印象は、
「やっとこさ利益を出せるようになった食べ頃のセゾン投信とその顧客基盤を利用して、しゃぶりつくそうとしている黒幕がいるのではなかろうか」
というようなネガティブなイメージでした。
私は、セゾン投信
簡単に想像しうることとしては、同じ日本郵政グループのゆうちょ銀行で販売手数料ありのセゾン投信のファンドが売られるのではないかだとか、経済合理性はないものの人気だけはある毎月分配型の投資信託をセゾン投信で作らされるのではないかだとか、目先の利益のために悪しき回転焼畑営業が推奨されるのではないか、というようなことです※1。
そのようなネガティブなイメージが思い浮かび、そして心配したのですが、一方で、中野社長がそのような方向性の資本・業務提携を簡単に認めるはずがない、とも思いました。
もちろん、子会社の社長である中野氏には親会社(株主)の意向には逆らえない場面もあるでしょうが、本当にそのような状況になれば、中野氏が社長の座を自ら降りて、「もう、セゾン投信はダメだ!」というメッセージを発信するくらいのことはやるような気がします(実際に口に出すかどうかは別にして)。
セゾン投信は、既存の悪しき投信販売のあり方を変えるために、中野社長が人生をかけて設立させたようなものですから。
(参考記事→『預金バカ ~賢い人は銀行預金をやめている~』(中野晴啓著)を読みました)
◎発表されている情報を見ると・・
さて、現段階で発表されている情報だけを見ると、セゾン投信にとってメッチャ美味しい資本・業務提携になっています。
なんと、日本郵便は手数料をとらずに、全国の郵便局でセゾン投信の宣伝活動をしてくれて、さらにセゾン投信の長期投資セミナーなども開催するというのです。
記者会見で日本郵便の高橋亨社長は、
「セゾン投信には若い顧客が多い。セゾン投信を紹介したり、セゾン投信主催の投資セミナーを開いたりすることで郵便局でも若い顧客層を新たに育て、資産形成のお手伝いをしたい」
と話したそうです。
セゾン投信の販売は日本郵便サイドでは行わず、これまでどおりセゾン投信からの直接販売方式を維持するとのことで、中野社長も「そんなにありがたい話があるのかと信じられなかった」という感想を持ったと新聞には記載されていました。
日本郵便は「金を出して協力は惜しまず、されど口は出さず」状態で、セゾン投信にとってかなり美味しい話に見えます。
全国に約2万4000ヵ所の郵便局を持つ日本郵便は、国内最大規模の販売・宣伝網を持っているといっても過言ではありません。そんな日本郵便とのコラボが、セゾン投信にとって大きなチャンスであるのは間違いないことです。
ファンドの純資産が大きく増えれば、信託報酬の引き下げを行うなどして、セゾン投信が「日本のバンガード」に近づく可能性も高まるでしょう。
◎日本郵便のメリットはなんなの?
しかしながら、利益を出すことが正義とされるこの資本主義の社会において、「日本郵便側には、この資本・業務提携にどのようなメリットがあるのだろう?」という疑問も湧いてきます。
現実的なメリットとしては、「出資に応じた配当のみを期待する」と日本郵便の高橋亨社長は話したそうです。業務提携というよりも、資本参加しただけというイメージなのでしょうか。
はて、、やっとこさ利益が出るようになったかならないかのセゾン投信に期待できる配当なんて、おそらく現段階では微々たるモノです。
日本郵便が、本当に長期的視野に立ってセゾン投信に出資したのであれば素晴らしいことですが、実際に提携が動き出してしばらく経つまでは、どうしても「それってホントなの?」という疑問が拭えません。
ただ、記者会見でクレディセゾンの林野宏社長は、
「セゾン投信の顧客数7万人、純資産残高1000億円を、中期的には70万人、1兆円にしたい」
と話したそうなので、たしかにそのようにセゾン投信が育つのを辛抱強く待てれば、日本郵便側にもメリットが出てくるでしょう。
ひょっとしたら、日本郵便にとっては8億円くらいたいした出資額ではないので、ホントにセゾン投信のビジネスモデルに共感し、「庶民のため」「正義ため」に投資したのかもしれない、なーんて希望的観測もできなくはありません。
◎今後の注目ポイントと期待
セゾン投信側の対応や発信情報を見ていても、今のところかなり「ポジティブな良い話」と受け止めているようなので、ちょっと安心していますが、続報は気になります。
(詳細は業務提携開始の2015年4月1日まで、しばらく検討されるようです。)
また、セゾン投信が今回の増資によって得た資金をどう使うのかにも要注目ですね。
セゾン投信には、これまでの理念を貫いて、「生活者の資産形成のために、良いものを安く提供する」というスタンスは失わずにいてもらいたいものです※2。
このあたりのことについては、中野社長自ら2014年10月2日のブログ記事にて、
「セゾン投信がクレディセゾン・日本郵便という2社の株主から求められているのは、これまでの事業活動により積み上げて来た事業財産を守り抜くことと、その事業価値を日本の生活者に劇的に広げて行くために両株主のリソースを有効活用して、大きな成果として結実させて欲しいということです。その結果、セゾン投信の企業価値が拡大することで、株主2社は経済的メリットを得られるのです。大変明確なコミットメントです。どうかご安心ください」
とハッキリ述べています※3。
ただし、もちろん中野社長をはじめとするセゾン投信のスタッフの「志」は疑いようもありませんが、今後、日本郵便が上場して、実質的にも「民営化」されたときなど、利益を追求するためにセゾン投信の理念を曲げるような方針の役員が送り込まれてくる可能性も捨て切れません。
株主が利益を求めるのは当たり前のことですが、その利益は目先のものではなく、長期的な視野に立ったものであって欲しいと強く思います。
今回の資本・業務提携のニュースを額面どおりに受け止めると、セゾン投信にとって短・中期的にはメリット絶大、長期的には不確定要素が増えた、というところでしょうか。
顧客層が広がってくれば、これまでのようにじっくりと長期投資を啓蒙しながら販売を行うことも簡単ではなくなってくるでしょうし、マーケットの状況によって右往左往しない「腰の据わった資金」をしっかりと集めることも難しくなることが予想されます。
クレディセゾンと日本郵便という巨大な株主との調整を図りながら舵取りをする中野社長の負担は、これまで以上に大きくなりそうですが、現代の金融業界の中で「キレイごと」を貫いて利益を出す好循環を作り上げてもらいたいものです。
それが実現し、日本の金融業界に新たな流れが確立されたときには、その意義に心が震えること間違いないですから!
《参考・当ブログのこれまでの主な(人気のある)セゾン投信関連記事》
・セゾン投信を投資初心者にオススメする理由
・セゾン投信のバンガード・グローバルバランスファンドから資金が流出している件について
・セゾン投信は危なくなかった
※1 この件について、中野社長は2014年10月2日のブログにて、
「まず多数の誤解としては、日本郵便とゆうちょ銀行の混同で、どっちも一緒に思っておられることです。今回資本参加するのは日本郵便、つまり郵便局です。ですからセゾン投信とゆうちょ銀行の間には、何も新たな関係はありません。なので、ゆうちょ銀行で毎月分配型ファンドと並べて販売されることもないし、販売手数料を取られることもありません。当然セゾン投信が毎月高分配型ファンドをつくる、なんてこともあり得ません。日本郵便(郵便局)もセゾン投信の株主になったからと言って、セゾン投信のファンドを販売したいとは言わないし、手数料収入を期待していることもありません」
と明言しています。
※2 この件についても、中野社長は2014年10月2日のブログにて、
「同社(日本郵便)からは出資にあたり、セゾン投信にはこれまでと同じビジネスモデルで、同じことを続けて欲しいと繰り返し要望され、更に郵便局のリソースを活用してその価値を飛躍的に大きく拡大させて欲しいとの意思を明確に示されました」
と述べているので、とりあえずは安心してもいいですかね。。
※3 中野社長は、日経CNBC/NIKKEI Channel<Markets>「マーケッツのツボ『“預金だけ”はなぜダメなのか?預金しかしてない人は必見!』」(10月7日)でも、同様のメッセージを力強く発信しています(そのYouTube動画)。
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