2014
Oct
04
保険診療と自由診療の違い【交通事故による診療には健康保険が使えない?・その2】
前回の記事(その1・健康保険とは)の続き
「交通事故による怪我の診療には、健康保険が使えない」というような話が囁かれることがあるものの、実際のところ、交通事故の被害者が健康保険を利用して診療を受けることは可能です。
しかしながら、健康保険を使って受診しようとしても、いわゆる普通の診療のようにスムーズにいきにくいことがあり、医療機関サイドでも「できれば、健康保険は使ってほしくない」というような本音があるように感じられます。
そのあたりの事情を理解するには、まず「保険診療と自由診療の違い」について整理しておく必要があるでしょう。
(この分野に関しても私は単なる雑魚素人です。事実の認識や制度の解釈などが必ずしも正しいとは限りませんので、その点にはご注意ください。)
「交通事故による怪我の診療には、健康保険が使えない」というような話が囁かれることがあるものの、実際のところ、交通事故の被害者が健康保険を利用して診療を受けることは可能です。
しかしながら、健康保険を使って受診しようとしても、いわゆる普通の診療のようにスムーズにいきにくいことがあり、医療機関サイドでも「できれば、健康保険は使ってほしくない」というような本音があるように感じられます。
そのあたりの事情を理解するには、まず「保険診療と自由診療の違い」について整理しておく必要があるでしょう。
(この分野に関しても私は単なる雑魚素人です。事実の認識や制度の解釈などが必ずしも正しいとは限りませんので、その点にはご注意ください。)
◎保険診療とは
医療機関によって私たちが受ける、いわゆる普通の診療は、ほとんどすべて「保険診療」になります。健康保険が適用される診療であり、診療内容は国の定めたルールのもとに統一されています。また、診療費用も「診療報酬」という国の定めた価格で統一されており、医療機関が勝手に設定することはできません。
どの病院で診療を受けても、基本的には同じ価格です。
仕事中の怪我などに適用される労災保険も、これ(保険診療)になります。
◎自由診療とは
一方、自由診療には、健康保険が適用されず、診療内容にも国の定めた統一ルールのようなものはありません。いわゆる先進医療※1と呼ばれるような高額な医療行為などがこれに該当します。「最先端の治療ながらも、保険は効かないベラボーに高い治療」というようなイメージでしょうか。美容整形やレーシック手術なども、これ(自由診療)になります。
この自由診療の場合、診療費用に法的な制限はなく、それぞれの医療機関が自由に価格を設定することができます。
つまり、医療機関は、保険診療よりも自由診療のほうが儲かる場合が多いのです※2※3。
◎「交通事故扱いですね!」は「稼がせてね!」という意味
交通事故によって病院などに運ばれたとき、会計のところで「交通事故扱いですね」と言われることがありますが、これは即ち「自由診療でいいですね」ということであり、さらに悪意のある意訳を私が加えると「加害者も被害者のあなたもキチンと自動車保険に加入していれば、どうせ金を払うのは保険会社だし、みみっちく健康保険なんて使わないで、自由診療で稼がせてね!」ということです※4。
自由診療だと、診療費用は保険診療の2~3倍であることが多く、しかも100%自己負担です。
通常の保険診療の3割負担が10割負担になり、さらに、それが倍以上になるということです。通常の窓口での支払い医療費が5倍以上になるようなイメージでしょう。
◎保険会社が全部支払ってくれることもあるけど・・
それでも普通は、加害者や被害者の加入している自動車保険(自賠責保険や任意保険)が負担してくれることがほとんどなので、実感のない場合が多いようです。
しかし、実際に私が目の当たりにしたケースで、自転車運転中に後方から一方的にトラックに撥ねられ、当初は相手側の損保会社(共済)が全額負担することになっていたものの、途中で話がこじれて(損保会社が悪魔になって)、自由診療の費用を被害者自ら全額負担する必要に迫られたことがありました※5(必読!)。
そのとき、被害者が医療機関から請求された金額は、なんと1泊の入院検査費用等だけで30万円以上だったように記憶しています。
自動車同士の事故であれば、自己負担なく保険会社同士のやりとりで、すべてが何もなかったように解決する(支払われる)ケースが多いのでしょうが、自分が歩行中や自転車運転中などに車に撥ねられた場合などは、自分の怪我をカバーする保険に加入していないことも十分に考えられます。
そんなとき、相手と自分の過失割合の関係で、自分にも支払い義務が発生することもあるでしょう。その際、自分の診療が保険診療だったのか、自由診療だったのかで、金銭負担もずいぶんと変わってきます。加害者が無保険である可能性だってゼロではありません。
まぁ、あとから保険診療に切り替えることも可能※6なようなので、事故直後の興奮状態でワケも分からず、「交通事故扱いですね」と聞かれて、「はい」と答えてしまってもさほど慌てることもないのですが。。。
では、交通事故の被害者として、保険診療を受ける(健康保険を使う)にはどうしたらいいのか、実際に健康保険を使ってみたらどうなるのか、などについて次回(シリーズ最終回)私の実体験を交えながら書いてみます。
つづく
実際に健康保険を使ったらどうなるかへ
※1 先進医療も、その有効性がキチンと確認されれば、保険診療として認められて健康保険が使えるようになることもあります。
※2 もちろん、患者の数や、患者の経済状況にもよるので、一概には言えない面もあります。また、最近は、自由診療による費用がベラボーには高くないこともあるようです。
※3 他にも、保険診療と自由診療を併用する混合診療というものがありますが、日本では差額ベッド代や先進医療などいくつかの例外を除いて基本的には認められておらず、またこれらについてクドクドと書くのは今回の記事の趣旨からは外れるので、これ以上は言及しません。
※4 必ずしもすべての医療機関でそのようなことはないでしょうが、私の数回の経験ではそんなニオイを感じました。
※5 加害者の損保会社(共済)は、最初のうちは被害者が軽症だと思ったようで、診療費の全額負担を申し出ていたのですが、頭蓋骨骨折等が明らかになり、被害者の怪我が深刻なものになるかもしれない可能性が出てくると、態度が一変しました(高度障害による高額補償を警戒したのでしょう)。
100%の責任を認めていたのに、急に100%の責任を押し付けてきて、後ろから人(交通ルールを守って道路の端を自転車走行)を撥ねておきながら、トラックの修理代まで請求してくる始末です(トラックのキズは、よく見ないと確認できないような小さなモノ)。
損保会社の担当者は、倫理的・人道的な問題よりも経済的な問題、つまりいかに支払い額を少なくするのかということが最優先となる仕事をしているので、こうなってしまうようです(当初、平謝りだった加害者も損保会社に知恵をつけられたのか、態度が一変し、「あとは保険会社を通してください」以外の言葉を発しなくなりました)。
こういう段階に入ってしまうと、こちらが素人だとどうにもなりません。交通事故に詳しい(できれば交通事故専門の)弁護士に早めに相談したほうがよいでしょう(交通事故に詳しくない離婚問題に詳しいだけの弁護士に相談してしまい、解決が遅遅として進まなくなるケースを見たことがあります)。
この件に関しては、The Goalのまつのすけさんのエントリ(自動車事故の示談における、損保の恐ろしい実態)も参考になります。
ちなみに私は一応、自動車保険には「弁護士費用特約」みたいなものを必ずつけるようにしています。
※6 賠償として損保会社が治療費を負担するときに、あまりにも高額になってしまう場合などは、その負担軽減のため、損保会社から被害者に自由診療から保険診療への切り替えを依頼するようなケースもあるそうです。

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