2014
Aug
16
『預金バカ ~賢い人は銀行預金をやめている~』(中野晴啓著)を読みました(感想・レビュー)
セゾン投信
の社長でもある中野晴啓氏が新著を出したということで、早速読んでみました。
以前にも中野晴啓氏の著書『投資信託はこの9本から選びなさい』に関する書評(読書感想文?)を書いたところ、けっこうご好評(アクセス)をいただけたので、調子に乗って今回も書評のようなものを書いてみたいと思います。
(参考記事→『投資信託はこの9本から選びなさい』(中野晴啓著)を読みました)
以前にも中野晴啓氏の著書『投資信託はこの9本から選びなさい』に関する書評(読書感想文?)を書いたところ、けっこうご好評(アクセス)をいただけたので、調子に乗って今回も書評のようなものを書いてみたいと思います。
(参考記事→『投資信託はこの9本から選びなさい』(中野晴啓著)を読みました)
◎現在の金融業界に著者の怒りが爆発!
「本物の金融」や「銀行の本来の役割」は経済や地域社会に貢献するものであると強く主張する著者は、現在のように預かったお金で国債を買い支えるだけの銀行や、高手数料のボッタクリ商品の回転売買ばかりを推し進める証券会社の販売現場などに対して、「ふざけるな!」と怒りを爆発させています。
そして、生活者が銀行に預金することのバカらしさを、これでもか!これでもか!と、たたみかけます。
また、「投資」と「投機」の違いや、「なぜ株価は上がるのか」というような掘り下げたポイントにもしっかりと言及しており、他にも、著者が日本各地を講演等で巡るなかで感じた人々の「お金」や「投資」に対する価値観などにも触れています。
実際に投資信託会社を創業・経営し、7年間のうちに7万超の口座に純資産残高900億円超(2014年7月末現在)を集める著者の言葉にはやはり説得力がありました。
セゾン投信の看板ファンドであるセゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(2022年9月10日よりセゾン・グローバルバランスファンドに名称変更)の運用が開始された2007年頃から、毎月1万円ずつ自動的積み立て投資した場合、なにもせずほったらかしにしておいても、今年3月時点でプラス36%になっている現実なども冒頭で紹介されています。あのリーマンショックを経ていて、この数値です、と。(実際は、リーマンショックを経たからこそ、なのですが・・)
(参考関連記事→セゾン投信を投資初心者にオススメする理由)
◎サラリーマン中野晴啓伝
ただし、この本は、投資そのものに関する説明には、それほどパワーを注いでおらず(投資=投資信託購入になっています)、普通の株式投資と投資信託との違いなどについてもあまり明確に解説されていないので、投資初心者向けの実践ガイドではないかもしれません。
個人的には、第2章の「私はこうして投資信託ビジネスを起業した」が面白かったです。
「サラリーマン中野晴啓」がバブル期にセゾングループに就職し、様々な経験を積みながら、失敗や挫折を重ねて、なんとかセゾン投信を立ち上げるストーリーがリアルに描かれています。次から次へと壁が立ちふさがり、ハッキリ言って逆境まみれの状況で奮闘する姿に刺激を受けました。
最終的に、セゾングループの取締役会の席上、全員反対の中で林野社長一人が「やる」と明言してくれたことで、やっとセゾン投信の立ち上げが決定したというエピソードなどは、読んでいて胸が熱くなること間違いなしです。
いまの世の中、キレイごとでは生きてゆけません。
しかし、それでもなるべくなら他人さまに胸を張ってキレイごとを言えるような仕事をしたいものです。そんなことを金融業界の中で実際に行っている著者が羨ましく思えました。これからも様々な逆風があるでしょうが、セゾン投信には頑固に創業理念を貫いてもらいたいものです。
◎著者自身は銀行預金ほとんどなし
著者である中野晴啓氏自身は、銀行には当座の生活に必要な10万円程度の預金があるだけで、それ以外はすべて厳選した6本の投資信託に分散投資してあるといいます。これは、経済の仕組みやリスク資産の値動きなどをキチンと理解している人でないとできないことでしょうが、合理的なお金との付き合い方だと思います。
(もちろん、この本には著者の厳選した6本の投資信託が書かれています。)
ただし、この本では今後のインフレを断言し、預金だけでは必ずそれに負けると書かれていますが、いくら今の政府がインフレ誘導を決めていてもインフレが実現する可能性は100%ではありませんし、預金もある程度はインフレに連動して金利が上昇する可能性が高いので、投資初心者は、投資をするにしてもキチンと自分の頭で考えて、まずは小額から始めてみたほうがよいでしょう。
預貯金等の安全資産と、投資信託などのリスク資産のバランスは、個人の投資(資産形成)にとっては、もっとも大切なポイントのひとつです。
(参考記事→アセットアロケーションの決め方シリーズまとめ)
今日の社会や経済の現状説明には、けっこう難しい専門用語などが登場するので、「日経新聞は毎日読んでいるし、ビジネスマンとしてバリバリ働いているけど、こと「お金の運用」についてはよく分からんよ!もちろん、稼いだお金は預貯金オンリーだ!」というような人にオススメできる一冊だと思いました。
また、「セゾン投信に口座は持ってるけど、その成り立ちや理念はイマイチよく分かってないんだよねぇ」という人にも読む価値があるように思います。まともな投資をすることの社会的意義などを考えるキッカケにもなるかもしれません。

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