購買力平価説とは

「1ドル=100円」などの「為替レート」は、多くの要因によって形成され、変動しています。

その要因はあまりにも多く、そして複雑に絡み合っているため、そのすべてを論理的に説明するのは困難を極めます。

ましてや、為替の先行きの正確な予測なんかは不可能であり、経済評論家の山崎元氏も「為替予測はエコノミストの墓場」だと言っています。

ただ、短期的な為替変動ではなく、数十年以上の長期的な為替変動は「購買力平価説」でほぼ説明がつくという意見に異論は少なく、私もそれに納得しています。

購買力平価説とは…


簡単にいうと、

「インフレ率(物価上昇率)が高い国の通貨は下落する」

というだけのことです(当然、その逆も然り)。


インフレによって通貨の価値が下がれば、買えるものの量が減るので、交換レートが下落するのは当たり前ですよね。



◎購買力平価説を作り話で解説してみましょう


現実的にはあり得ない設定の物語で解説を試みます。

全く同じダンゴムシの標本が、
日本では1個100円
アメリカでは1個1ドル

で売っていました。

ダンゴムシの標本は両国民が心から愛する人気商品であり、どこの店で買っても同じ値段です。

このときの両国の為替レートは、1ドル=100円でした。
異なる通貨であっても、同じモノは同じ価値の価格で販売されます(一物一価の法則)。

しかし、あるとき両国の国交が断絶してしまい、貿易も完全に途絶えてしまいました。
その後20年間、両国の間には貿易をはじめとする経済活動は一切ありませんでした。


そして、その20年の間に、日本ではデフレ(物価下落)が続き、アメリカではインフレ(物価上昇)が続きました。

その結果(20年後)、ダンゴムシの標本は、
日本では1個50円
アメリカでは1個2ドル

で売られるようになっていました。


ところがある日、両国の国交が回復し、再び貿易などの経済活動がスタートしました。

久しぶりの国交回復だったので、両国の為替レートはとりあえず国交断絶直前と同じ、1ドル=100円でスタートすることになりました。

アメリカ人は、自国で買えば1個2ドルするダンゴムシの標本が、日本に行けば0.5ドル(=50円)で買えることに狂喜しました。アメリカでは2ドル出しても1個しか買えないダンゴムシの標本が、日本に行けば4個も買えるのです。

多くのアメリカ人が日本にやってきて、ダンゴムシの標本を買いまくりました。
アメリカ人が日本で買ったダンゴムシの標本は、家に持ち帰って眺めて気持ちよくなるもよし、アメリカで1個2ドルで売って、日本との差額で儲けるもよしです。
日本のダンゴムシの標本屋のオヤジも商売繁盛で大喜びです。

このとき、アメリカ人は、日本でダンゴムシの標本を買うために「円」を調達するべく、大量のドルを円に換えました。これは「ドルを売って、円を買う」ということです。

アメリカ人にとっては、ダンゴムシの標本以外のあらゆる商品も安いので、彼らは日本製品を買うために、ドルを円に換えまくりました。ドルを売りまくり、円を買いまくったのです。

そうなれば当然、円高ドル安が進みます(オークション等でも買い手の多いモノの値段は上がりますよね)。
そして、しばらく時間が経ったら、1ドル=100円だった為替レートは、1ドル=25円になっていました。

結局、日本でダンゴムシの標本を買うには、2ドル(=50円)が必要になってしまったのです。


このような為替変動がおこったのは、購買力平価が成り立っているからです。

インフレの進んだアメリカのドルは下落し、デフレの進んだ日本の円は上昇しました。
(あれ?ここまで極端ではありませんが、なんか実際の現象と似ていますね。)

仮に両国ともインフレが進んでいたとしても、よりインフレ率の高い方の国の通貨が下落することになったでしょう。
(2国間の為替レートは相対的なものなので、インフレが進んでいてもそのスピードが通貨交換国よりも遅ければ通貨は上昇します。両国でデフレが進んでいれば、そのスピードが遅い方の国の通貨が下落します。)

あくまでも長期的にみた理論的な話ですが、当たり前の話にも感じますね。



◎現実は物語のように単純ではない


ま、実際には流通コストがかかりますし、貿易の状況は複雑なので、ここまで単純になることはあり得ません。一物一価の法則だって、国内ですら成立していないことがよくあります。

また、国交が断絶したあと、いきなり20年前の為替レートでスタートするなんてこともあり得ませんが、ジワジワした日々の変動だと分かりにくいかなと思って、極端な設定にしてみました。
(他にも細かい説明を省きまくっているので、もっと正確に理解したい方は、おググリくださいませ。)


上記の仮想物語のような為替変動は、実際のところ数十年単位では成り立っているものの、数ヶ月・数年単位では全く成り立たずに、購買力平価から大きく乖離することが多いのも事実です。

結局、為替変動を購買力平価説で説明できるのは、長期的に見て(グラフの目を粗くして)あとから振り返った場合だけなのです。
(それでも、知らないよりは知っていた方がいいですよね。)



◎で、今後の為替は円安に向かうの??


こんな記事を書こうと思ったのは、数日前のまつのすけさんの記事を読んで、22年ぶりに日欧のインフレ率の逆転があったことを知ったからです。
(その後、日米のインフレ率逆転もありました→これもまつのすけさんの記事からどうぞ!)


ただし、日本のインフレ率がユーロ圏を上回ったといってもまだごく僅かであり、この傾向が続くのかどうかは分かりません。さらに、どのタイミングで為替に反映されてくるのかも分かりません(もう既に先取りして反映されている、なんてことだってあり得ます)。

仮に購買力平価が完全に成り立っているとしても、各国の将来のインフレ率が分からなければ、為替の先行きは予測できません。当然、将来のインフレ率なんて私には分からないので、為替の先行きなんて分からないのです。

結局、凡人の私は、短期はもちろん長期においても為替予測はできないので(為替以外のことも分かりませんし)、世界中の様々なアセットクラスに分散投資しておいて、たまにリバランス※1することしかできない、といういつもと同じまとめでスンマセンです。



※1 リバランスとは、一定の時期(もしくは乖離率)ごとに、最初に決めたアセットアロケーション(資産配分)比率より上がっているもの(アセット)は売却し、下がっているものは買い増して元に戻すことです。主目的はリスクコントロールですが、価格の下がった資産を買って比率を戻すことで、長期的には高パフォーマンスが期待できるといわれています。
もちろん、リバランスによる長期的な高パフォーマンスを期待するためには、株価や債券価格や為替の上下循環(下がってもまた上がる・上がってもまた下がる)という前提が必要ですが・・


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22年ぶりの歴史的日欧インフレ率逆転
ユーロ圏の10月のインフレ率は、予想を遥かに超える大幅な低下となり、総合CPIでは歴史的な日欧インフレ率逆転となりました。ユーロ圏0.7%、日本(9月)は1.1%です。これは日本の消費税引き上げ時を除くと、1991年1月以来となります。ユーロ圏のインフレ率が低下していることも背景に、ECBはサプライズの利下げに踏み切りました。


プロフィール

虫とり小僧

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子供の頃は、一日に800匹以上のバッタを捕まえるような虫とり少年でした。また、歩行中にはすべての家の「ピンポン」を必ず押すようないたずら小僧でもありました。今はただのザコです。

※好きなものは、歴史・格闘技(実践も観戦も)・筋トレなど

※小説も書いてます→『迫力』



自分の全資産を「円」のみで保有していること(何もしないこと)は、それなりのリスクを伴う集中投資に近いものだと解釈して、私は購買力維持や資産形成を目的に、資産の一部を世界中の株式や債券などの保有にあてています。

約12年前から、なるべく手間とコストをかけずに実践している投資方法を、いつか我が子に伝えるかもしれないので、そのための備忘録を書いておくことにしました。

投資の実践といっても、ひと月に一度の自動積立と、たまにやるリバランスくらいですが…



※当ブログのエッセンスをまとめた記事はこちら

我が子に伝えたい5つの大切なお金のこと


※主なメディア掲載・出演履歴
東証マネ部!・R25:2017年3月
R25・東証マネ部!:2017年1月
BIG tomorrow:2016年7月号
Yen SPA!:2016年冬号
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ザイスポ!:2015年9月18日
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