『投資信託はこの9本から選びなさい』(中野晴啓著)を読みました(感想・レビュー)

セゾン投信の社長でもある中野晴啓さんの人気著書を手に取る機会があったので、これ幸いと読んでみました。




私も投資を始める前後は、投資に関する著書を読みまくりました(それこそ図書館にある関連書籍を片っ端からすべて読破しました)が、国際分散インデックス積立投資を自分のスタンスと決めてからは、投資関連本とくに初心者向けの本をわざわざ購入して読むような機会は減っていました。

私のような投資スタンスの場合(参考記事→インデックス投資とは)、ある程度の勉強をして基本的なことを理解してしまえば、あとはそれ以上いくら勉強をしたところで、リターンが向上するわけではありません。

しかし、だからといって、まったく投資に関する情報を拾わずに思考停止になってしまうのも考えモノなので、たまには読むようにしています。


私が啓蒙して投資を始めた同僚が、つい先日、

「出張のときの長距離移動のお供にと思って、駅の本屋でテキトーに選んで買ってみたら、読みやすくて、なかなか面白い本だったよ。読んでみる?」

と言って手渡してくれた本が、たまたま『投資信託はこの9本から選びなさい』でした。



◎投資家にとっての必須知識が詰まった良本


せっかくの機会だったので早速読んでみると、日本の投資信託誕生の背景や販売現場の現状などが分かりやすく書かれており、かつ投資信託の仕組みについてもキチンと説明されている良本でした。

「投資信託って実際どんなモノなんだろう?」と思っている初心者や、「投資を始めてはみたものの、このままで良いのだろうか?」と思っているような人が読む本としてオススメできると思いました。

マーケットの平均的なリターンや、販売窓口でオススメを聞いてはいけないこと、また投資信託の手数料体系とそのインパクトなど、投資家にとっての必須知識がしっかりと書かれています。

ただ、基本的に私は、中野さんの話が好きですし、その立ち上げから注視しているセゾン投信を応援したいという感情的なバイアスを持っている人間なので、あえてイヤらしく厳しい目線での雑感を書いてみることにします。

(一冊の本に収まりきる内容に限界があることは重々承知ですし、様々な葛藤を経たうえで取捨選択が行われたであろうことも分かったうえでの戯言です。)



◎複利で資産が殖えていくイメージ図の功罪


どの長期投資本にもたいてい載っている図(グラフ)ですが、この本にも「仮に年率7%の複利で金融資産が殖えたらどうなるか」の図があります(右肩上がりが加速していくグラフ)。

arrow633.jpg
↑こういうカンジのやつ


一般的な国際分散投資を続けた場合の年率リターンを平均すれば、7%という数値が無茶なモノだとは思いませんが、やはりあの図のような値動きで資産が殖えていくことは考えにくいと思います。
投資元本を上回ったり、ときに大きく下回ったりしながら、少しずつ積み上がっていく可能性の方が高いはずです。

そして、投資初心者は、ごく僅かであっても投資元本がマイナスになったときにアレルギー反応が起こるのではないでしょうか。


私は、あの図を使うのが良くないということを言いたいわけではありません。むしろ、初心者に興味を持ってもらうためには、あの手の図は必須だとも思っています。

ただし、プラス面(複利の効果)を強調する場合は、必ずセットでマイナス面(最大損失など)にも言及しておいた方がよいような気がしています。

私が投資初心者に投資を啓蒙する場合、最も説明に力を入れるのはダウンサイドのリスクについてです。

リスク資産に投資をすれば(アセットクラスにもよりますが)、「投資資金が半分以下になることがある」くらいの覚悟が必要ですが、一時的にはそのようなリスクを許容できる人が大きなリターンを享受できるのがマーケットの世界です。だからこそ、ダウンサイドのリスクへの言及は必須だと思っています。



◎無リスク資産とのバランス


スクリーニングの結果、買ってよいファンドとして株式運用オンリーのファンドを紹介するのなら(やはりそれだけではリスクが高すぎると思うので)、債券や無リスク資産とのバランスについてもう少し説明しても良かったのかなぁとも思います(参考記事→まずは生活防衛資金)。

私もすべての投信会社の発信情報やコラムを読んでいるわけではありませんが、ファンドの売り手が無リスク資産の重要性を説いている情報を見た記憶は残っていません。だからこそ、そこに言及することで「投信業界の良心」的な心意気を見たいと思いました。



◎スクリーニング方法とその結果について


投資なんぞに時間をかけたくない普通の人が投資信託を買うという前提があるならば(この本はそういう本だと私は解釈しました)、これ一本だけで十分だと言えるようなアセット分散があるものをスクリーニング条件に入れても良かった気もします(そうするとセゾン資産設計の達人ファンドが外れてしまいますが…)。

先ほども書きましたが、株式運用オンリーのファンドを紹介するのなら、他のアセットとのバランスについても説明しないと、初心者がヤケドをする可能性の高い不親切なものになってしまうと思います。


前回の著書『投資信託は、この8本から選びなさい。』のときは、「1年以上にわたって毎月資金が純増であること」だったスクリーニング条件が、「1年間の資金流入が純増であり、それがこの3年にわたって継続されていること」に変わったのは、セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドがスクリーニング結果に残るための必須変更だったのだと思いますが(笑)、この条件がより長期投資に適したファンドを選ぶためのものであるという点についてはその通りだと思うので、否定的な見方をするつもりは全くありません。

細かいツッコミどころはあるものの、あと少しの補足があれば、スクリーニング方法とその結果は概ね納得のいくものだと思いました。



重箱の隅をつつくようなことを書きましたが、多くの「普通の人」にとって、この本の基本的な主張や投資信託の見方(スクリーニング方法)はとても参考になるものでしょう。

投資なんかに時間をかけず、信用するに足る投資信託を積み立てておけば、将来的にそれなりの「自分年金」を確保できる可能性が非常に高いという、普通の人にとっては気づきもしない世界に多くの日本人が気づくことは良いことだと思います。
(各人が実際に投資をするかどうかは、その次の話です。)


同僚が私にこの本を手渡ししてくれるときに言った感想は、

「ここ最近、アベノミクスとかいって世間で騒がれてるから、俺もなんか色々としなきゃいけないのかなとか思ってたけど、この本読んだら、既に何年も前から自動積み立てで国際分散投資をしてる俺は、別に他に余計なことする必要はないんだな、って気になったよ」

というものでした。

彼は全くの投資初心者というワケではありませんでしたが、彼にそのような感想を持たせたということは、著者の意図がしっかりと伝わっているのだなと感じました。


(参考記事→セゾン投信を投資初心者にオススメする理由


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プロフィール

虫とり小僧

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子供の頃は、一日に800匹以上のバッタを捕まえるような虫とり少年でした。また、歩行中にはすべての家の「ピンポン」を必ず押すようないたずら小僧でもありました。今はただのザコです。

※好きなものは、歴史・格闘技(実践も観戦も)・筋トレなど

※小説も書いてます→『迫力』



自分の全資産を「円」のみで保有していること(何もしないこと)は、それなりのリスクを伴う集中投資に近いものだと解釈して、私は購買力維持や資産形成を目的に、資産の一部を世界中の株式や債券などの保有にあてています。

約12年前から、なるべく手間とコストをかけずに実践している投資方法を、いつか我が子に伝えるかもしれないので、そのための備忘録を書いておくことにしました。

投資の実践といっても、ひと月に一度の自動積立と、たまにやるリバランスくらいですが…



※当ブログのエッセンスをまとめた記事はこちら

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